ENVIRONMENT

“革” は浄化され、“ 川” へと帰る

革の鞣(なめ)し工程では、大量の水を使用します。
一日に使用される水は、約900トン。
栃木レザーでは大きな排水設備を用いて、製造工程で使用した水をろ過。浄化して川に帰しています。
ここ栃木の豊かな環境のために。
“革”という命を預かり、命の源である水をきれいにして“川”に帰す――。
それが、水を多く使う私達が取り組むべき使命です。

巴波川

栃木レザーが拠点を置く栃木市は、幕末から昭和初期に栄えた問屋町。
ここには町の交易を支えた巴波川が流れています。

栃木レザーは、創業当初から「地域との共存」を掲げ、豊かな自然環境を守ることを大切にしてきました。そのため、排水処理には薬品は一切使用せず、バクテリアや微生物など自然由来の力を用いた、自然にやさしい循環システムを展開しています。

巴波川

上質な革作りに必要不可欠なもの――。それは、豊かな“水”です。
栃木レザーの敷地内には、一級河川「巴波川」が流れています。昔はここに皮を吊るし、自然界にいる微生物の力を借りて水洗いをしたこともありました。
“革”を生み出してくれた“川”に、どんな恩返しができるか――。その答えを見つけるべく、栃木レザーでは排水処理の方法にさまざまな試行錯誤を重ねてきました。

栃木レザーの排水設備

現在、栃木レザーでは大規模な排水設備を用い、製造工程で使用した水をろ過しています。
まずは9区画に分けた曝気槽(浄水処理工程を行う設備)で汚水を段階的に中和。ここでは、バクテリアや微生物を用いて浄化します。
皮革製造では原皮の脱毛工程で石灰の入った強アルカリ溶液を使用するため、これを中和する作業も必要です。昔はこの工程で硫酸を使用していましたが、現在は酵素を用いて自然にやさしい方法で浄化を進めます。
浄化された水の3分の1は原皮洗いに再利用し、残りは川に戻されます。また、栃木レザーが採用している循環システムでは、浄化後に沈殿した堆肥物や汚泥は土壌改良剤として再利用できるようになり、やがて土に還る仕組みになっています。

土壌改良剤

汚泥は土壌改良剤として再利用されるほか、ゴルフ場の芝生や東日本大震災で被災した福島の復興にも役立てられています。

健康的に育つ牛

命から“革”を生み出し、最後は自然に返す――。
“循環”を意識したもの作りを徹底

栃木レザーでは、原皮を専門業者から仕入れています。この業者は、食肉加工を行う肉業者と提携している専門業者です。
栃木レザーでは、革を作るためだけに牛を“殺める”ことはしていません。私達人間が“食べる”ことで生じる副産物を、鞄や靴、ベルトなどの日用として生かせるよう加工しているのです。
自然と命に感謝し、少しでも長く愛着を持って使っていただける革作りを行なうこと――。そして、命を育む自然に感謝し、環境問題に取り組むことこそが、私達栃木レザーの使命です。